耳は、目や口と違っていつも開いているから、勝手にいろんな音が飛び込んで来る。遠くの山鳴り、近くのささやき、前後左右上下、全ての方向から。人は生まれてからそれを数年経験することでバランス感覚を持ち、聴きたく無いことをある程度遮断することができる。どんなに騒がしい場所でも静かさを感じたり、静かな夜に自分の鼓動が気になったり。精神的なことや、体感的な聴こえも影響していろんな聴くを人は獲得している。

ここ10年くらい、音楽と、その周りにあることがらの変化の中に生きている。
「聴く」ってことでいうと、iPodをはじめとするポータブルプレーヤーの普及によって、音楽が個人的な体験として存在し、データによる音源の購入方法によってあらゆるサービスが技術と共に発展しネットワークの中に共感や共有が存在している。
とはいえ、いつかのフォークソングやジャズ喫茶のように空間と音楽を共有する方法が無くなる訳も無く、街の小さなカフェや、クラブ/ライブハウスでは良質な音楽を楽しむ人たちもたくさんいる。
音楽を「作る」人たちは増え、DTM/DJ機器の普及によって、楽器を演奏するってことに依存することなく楽曲を生み出すことも容易に可能になった。
音楽を聴くことも、作ることも多様化し楽しむ方法がとてつもなく増えていっている。

でも、僕らはそれを選ぶことができるだろうか。手に入れる方法、聴き方、収集の仕方、共有すること。ミュージシャンが望んでいる形で楽曲を聴く方法を知れているんだろうか。
長い間音楽が巨大な産業と共にあったからマスなインフラの中で享受するしかなかったけど、それは安定した音楽の手に入れ方であり、配布の仕方であったとも言える。(いろんな搾取は存在したが)昨今の多様化し過ぎた音楽を手に入れる方法は、ネットワークの中でデータになって垂れ流され、加工や劣化した音源を知らずに手にしてしまう可能性を持つ。
音楽は手に入れたときにすでに、それを手にしたそれぞれ人のものであって、この時代の早さと多様化によって、正しさを理解することはもうできないのかも知れない。
間違いないことは、音楽はありふれた存在であって、かけがえの無い存在であるということ。
さぁて、どうしたもんやら。

なんだか神戸で、いろんな聴く人や作る人が集まって、音楽を聴くことについてのあれやこれやが語られるイベントがあるらしい。これは日常をクリエイトするよもや話であって、政治とか経済とか、社会とか倫理を工夫によって楽しむ人たちのお祭りになりそうだ。

《音楽》の正しい聴き方 http://kavc.or.jp/other/ongaku/
〜13人のリスナーによる”耳”を広げる音楽の聴き方トークライブ2日間
主に関西で活躍する音楽を愛するクリエイター13人による「音楽の聞き方」をテーマとしたリレートークイベント。
   
日時:2010年5月8日(土)・9日(日) 12: 00~20: 00
会場:神戸アートビレッジセンター http://kavc.or.jp/
入場:無料(入退場自由)

【出演】 藤本由紀夫(アーティスト)、北夙川不可止(歌人)、クリストファー・スティヴンズ(翻訳家)、櫻田和也(NPO remo)、安田謙一(ロック漫筆)、tofubeats(トラックメイカー・DJ)、オオルタイチ(音楽家)、服部滋樹(graf代表)、森本アリ(音 楽家)、岩崎和夫(アナウンサー)、佐藤武紀(音響作家)、細馬宏通(滋賀県立大学)、佐々木敦(批評家)/【聞き手】 岩淵拓郎(美術家・執筆編集 者)、佐藤亘(音楽家)


☆上記テキストに関係ありそうな関連サイト☆

DIY STARS
http://diy.tunk.jp/
七尾旅人とTUNKが「アーティスト自らが作品を発表し、自身の手でユーザーに届ける」というコンセプトを元に開発した楽曲の販売システム。
七尾旅人 http://www.tavito.net/index.html

大友良英のJAMJAMラジオ
http://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/jam/

ポピュラー・カルチャー・シンポジウム「パクリ」
http://info.kyoto-seika.ac.jp/event/special/2010/1-1.php