ついさっき、ツタヤで200円の延滞料金を支払ったところ。
パラパラと小雨程度なので歩いて帰る。

街灯の光に小雨が細いラインを描いて無数に落ちる。
小さな水たまりが夜の海の波のように黒くうねる。

ヘッドフォンから流れるシャッフルされた音楽。
斎場を2個。1個は僕のおじいさんの葬儀が行われた場所。
偶然にも半径数キロメートルの家に僕は住んでいる。

1度しか会った事がないけれど
とても大事に僕と弟を案内してくれたことを思い出す。
2度目は葬儀。家族を代表して、僕のみが参加。
知らない人ばかり、はじめての黒いネクタイ。
妙に息が詰まる気持ちだった。

雨を跳ね返す高架を煌煌とした明かりを灯す電車が
轟音と共に過ぎ去って、雨が打ち付けられる音だけを残して闇に消えていく。
川がゴロゴロと何か野蛮な生き物みたいな色と動きで流れていく。
小さな雨粒は野蛮なうごめきに吸収されて
その一部に溶けて、音楽は急にロックンロールを奏でだす。

地面に打ち付けられた雫が
さらに微細な霧に変わって
土のにおい、コンクリートの香りを
鼻腔に打ち付ける。

ロックだなぁ。なんてにおいに思って
駅から我が家までの20分の旅が終わる。
おいしいご飯とあったかい部屋。
エソラの寝顔と妻との会話で
今日は終演。お疲れ様でした。