京都御苑を横に見て、閑静な住宅地を少し入った築300年の町家を店舗にした呉服店「あいぜん」へ、二代目となる兄妹が立ち上げた「西村兄妹キモノ店」の二人に話を聞きに行ってきました。

西村兄妹キモノ店は2004年に「キモノを身近に」をコンセプトに、洋服で使われるアパレル生地やデニムなど、カジュアルな素材とデザインを組み合わせた若者向けのキモノや浴衣を提案するキモノブランドとしてスタートし、2007年には新たに「プレミアムな着物を」と、伝統的な着物作りを行う新ブランド「寿 kotohogi」を開始。
現在は従来の現代的なアプローチとデザインのカジュアルラインを【和 nagomi】として展開中。
最近では、海外デザイナーELEY KISHIMOTOとのコラボレーション、歌手の加藤ミリアさんとの振袖制作などのコラボレーション展開も行い、積極的に若い年代にも着物の魅力を伝える企画を行っています。

30代である僕と同世代の兄妹が着物の世界に入り6年。
話の中で興味深かったのは、20代の頃に自分のお金で買えて、気軽に着れる着物という事で【和 nagomi】を始めた当初は、シルクなどを使った伝統的な着物と比べて、「これは着物じゃない」というお客さんの声もあったそうなのだけれど、続けていく事で今では、あつらいの着物を買いに来た年配のお客さんで「こんなんあるなら一枚もらっとくわ」「楽やん」と言って購入してくれる人や、【和 nagomi】を着てくれている若いお客さんから、本格的な着物が着たくなったと言って伝統的な着物を買っていくといった事が起こっているという話でした。

洋服が主流となっている中で、カジュアルな着物が伝統的な着物を着るキッカケとなったり、また伝統的な着物を求める人がカジュアルな着物の良さを感じてくれるというような相乗効果が生まれている事は、今後の着物文化、産業、生活における可能性を感じることが出来ました。

また、そうした状況は、二人が意図したものではなく、本格的なシルク着物とは違うアプローチを行う中で、お客さんから自然と出て来たニーズだったという事も興味深い。
西村兄が「お客さんが決めると思うんですよね。で、お客さんが決めるだけの提案をこちらがしたりとか、今の時代に合った喜んでくれる事を考えないといけないと思っている。作り手側で線引きして大上段に決めなくても、お客さんにとってという目線で考えると答えは近いのかなと思う」
というように、お客さんが求めるものにしっかりとアンテナを張り、作り手としてそれらを如何に形にするかを実践し、時代に合った着物文化を作っていく。

路面店から予約制店舗での販売となり、「今は自分達の手の届く、目に見える範囲で、一人一人のお客さんとコミュニケーションを取りながら接客する事がすごく大切な時間」と言う西村兄妹キモノ店のスタンスには、時代に合った着物を、作り手とお客さんが一緒に作っていくものなのだという確かな気持ちを感じることが出来た。

西村兄妹キモノ店 http://www.kimono-breath.net