ワンダーランド 陶アート 展

|会期:2011年5月14日(土) – 6月4日(土)

|時間:11:00−19:00 (火−土曜日)

|休廊日:日・月曜日、祝日

|場所:小山登美夫ギャラリー京都(京都市下京区西側町483)
>>> http://www.tomiokoyamagallery.com/

|作家:フジタチサト、藤田匠平、原 菜央、片山亜紀、増田哲士、谷内 薫

|キュレーター:沢田眉香子

|オープニングレセプション:5月14日(土) 6:00 – 8:00pm

|展覧会について:
本展は、うつわを巡る京都探訪ガイド「京都うつわさんぽ」(光村推古書院)の著者・沢田眉香子(編集・著述業)のキュレーションによる、陶磁という素材で表現する京都の若手作家5名と1組のグループ展です。

この展覧会はオブジェ/うつわのボーダーを超える若手作家の作品を通して、そのオリジナルで高度な技巧と世界観をお見せするものです。作家たちのパーソナルで現代的な表現は、工芸というジャンル、陶芸史における相対的な評価に収まるものではありません。彼等の陶芸へのアプローチは様々ですが、陶磁器という我々の生活に近しい素材が持つ親密な感覚、日本に培われて来た陶磁制作の経験値を武器にした、日本ならではの立体表現、という点で共通しています。京都では「京焼」という伝統を背景に、陶磁に絶えることなく試行錯誤と実験が行われて来ました。陶磁器に絵画やデザインという異ジャンルの美を取り込み、うつわをアートに越境させた「京焼」の精神を、出品作家たちに見ることも出来るでしょう。

ー沢田眉香子

 

|プロフィール:(50音順、テキスト:沢田眉香子)

沢田眉香子(さわだ・みかこ)
1966年生まれ 京阪神エルマガジン編集長を経てフリーの編集・著述業。京都新聞でギャラリー展評を担当、産經新聞「うつわ通になる」、あまから手帖「ときの器」連載中。

 

片山亜紀(かたやま・あき)
1979生まれ 京都市立芸術大学 美術学部工芸科陶磁器専攻卒業作品に断層のようにあらわれる、一見、フリーハンドで描かれたようなライン。タタラ(平たくならした生地)に均一に顔料を塗り、それを何層も重ねて塊になるよう寄せ、彫刻のように削り出して成形します。地層のような、年輪のような、水紋のようなラインと、手で削り出されたかたちは、静かでありながら自然を擬態する生き物のように生々しくもあります。「積層刳貫手」(セキソウクリヌキデ)と呼ばれる、オリジナルの手法です。

 

谷内 薫(たにうち・かおる)
1983年生まれ 京都精華大学 芸術学部デザイン学科 テキスタイルデザインコース卒業うねり、反り、広がる柔らかな造形は、土を布状に延ばしドレープを寄せ、プリントを施すように模様を刻んで成形されています。葉脈を思わせる重厚でしなやかな表面は、一本一本の筋をつづれ織りのように緻密に線刻したもの。釉薬は布地に広がる滲みのようなムラを染め上げています。テキスタイルを学んで陶芸に転じた作家は、フェティッシュなこだわりで染め、織りの手法と効果を土の上に描こうとしています。

 

原 菜央(はら・なお)
1984生まれ 京都精華大学 芸術学部造形学科陶芸分野卒業、京都市産業技術研修所(旧京都市工業試験場)京都市伝統産業技術者研修陶磁器コース専修科修了奇怪なクリーチャーと「道で拾った」人形から型抜きしたうさぎが絡む、残酷な寓話のような造形。そこに「嫌な感じ」のフェミニンなピンクとケミカルな青で、発疹のような緻密な絵付けをびっしりと這わせる。人が違和感を催す要素をわざわざ選びとり、複雑な工程の間ずっと不協和音のテンションをキープしたまま突き抜けることで、嫌悪感を「コワかわいい」パンクな世界に反転させる「イヤよイヤよも数寄(スキ)のうち」な作品です。

 

藤田匠平(ふじた・しょうへい)
1968年生まれ 京都市立芸術大学 美術科日本画から工芸科陶磁器に転科、同大学院修了 ブリティッシュカウンシルのフェローシップを得てEdinburgh College Of Art にて留学すりガラスのような不思議な感触とまだらな模様は、温度を変えて二度焼きした釉薬を削り露出させたもの。誰も見たことのなかった釉薬の層の内側の神秘的な表情と、長時間かけて削り出されたことによる、まるで風雪が形作ったような有機的なかたち。「成形し釉薬をかけ焼く」ことに完結しない、作家の実験的な技法から、まだ見ぬ焼きものが姿を現します。

 

フジタチサト(ふじたちさと:藤田匠平×山野千里のユニット)
山野千里(やまの・ちさと)1977年生まれ、京都市立芸術大学 大学院工芸専攻(陶磁器)修了藤田匠平×山野千里とのユニット。か細く深い輪郭線は、針で引っ掻いて化粧土を象嵌し、掻き落としています。筆で描いた線とは違うこの強い下絵にカラフルな上絵が施されています。見ていると吸い込まれそうな、物語性豊かな絵柄には、「うつわの絵付」を超えた、親密で触感に訴える独特の絵画の世界があります。手に触れるうつわ、身近な器型という立体の上ならではの表現といえるかもしれません。

 

増田哲士(ますだ・さとし)
1973年生まれ 京都教育大学卒業和のあたたかさと北欧のうつわの洗練と、敬愛するルーシー・リーのふくよかさを写した若々しくも熟成されたかたちが持ち味です。ろくろで成形したうつわにカンナで模様を刻む、「しのぎ」と呼ばれる技法で装飾しています。民芸の小鹿田焼の「飛びカンナ」による幾何学的な文様がにも似ています。手でひとつひとつ刻まれた作家の文様はなめらかで暖かみがあり、釉の味わいと相まって、日々の生活に存在感を放ちます。

 

|お問い合わせ先:
小山登美夫ギャラリー 京都 / TKGエディションズ
京都プレス担当:藤川二葉 TEL:075-353-9994