「MEET」の第四回目は、二条高倉の「IREMONYA DESIGN LABO」から独立され、
2009年の5月16日に京都の堀川竹屋町で「Masaki Tokuda Design.」という
デザインオフィス、そして、同じ建物内で「SONGBIRD DESIGN STORE.」
というSHOPとカフェを始めた徳田正樹さんにお会いしてきました。

そんな徳田さんと「デザイン」、そして「京都」のお話をしました。

徳田 : これ突然、話が始まっていく感じなんですか?
なんかしっかりした構成とかが、あると思っていました。。。

佐野 : すいません、ない感じです。。。(笑)
いつも、その場その場で考えながら話しています。

それではよろしくお願いいたします。
で、どんな話をしていきましょうか。笑

沈黙。。。(二人 笑)

佐野 : では最初に少しだけ。
このRefsignの「MEET」というコーナーは
自分の中でのテーマというか、約束事は決めていまして、

まず「メールインタビューはできればしない」
後、「ある程度、お話をする間柄になってからお話する」

という2点は決めています。

これは私も徳田さんもサイトを見て頂いているたくさんの会った事のない人に
対して「インターネット」という媒体を使って情報の発信を行っていくということになりますよね。

徳田 : はい。

佐野 : なので、話をする二人の関係性だけでも「リアル」な関係で
対談を行いたいと思っているんです。

「それでしか出せない、そして感じられない、もの」があると思っています。

徳田 : なるほど。わかりました。

佐野 : そういえば徳田さんが初めてインタビューを受けた際の相手は松倉君なんですよね?

徳田 : そうなんです。松倉君も初めてのインタビューだったと思います。
その時、約束の時間になってまだかな?と外を見ると
外で円陣を組んでいる人達がいてその人達がインタビューチームと
認識した瞬間、気持ちが引き締まりました。

佐野 : 円陣ですか?凄いですね。
それは気持ちが引き締まりますね。
ちゃんとしないとって。

徳田 : そうなんです。
でもとてもいい体験でした。

佐野 : そのおかげで私は徳田さんと知り合いに慣れた訳ですもんね!
松倉君に感謝です。
(佐野と徳田さんがあうきっかけは松倉君が引き合わせてくれました。)

あっ!聞きたい事が出てきました。笑
徳田さんが初めて製作した家具って何なんですか?

徳田 : 仕事でですか?

佐野 : いや仕事でなくてもなんでもいいですよ。

徳田 : 学生のときに作った棚ですかね。

佐野 : 課題ですか?

徳田 : いや、課題では実作したことはなくて自分で使うための棚です。
デザインは実は、、、「イームズ」のモロコピーです。笑

その時にマネ(コピー)の大切さを学びました。

佐野 : いや!それは本当にそうですよね。分かります。
僕も今でも学生に時々言っているのですが。
取り敢えず、何も考えずにコピーしてみたら!と。
そのかわり、100%のコピーです。
でもやってみると案外100%のコピーって難しいんですよね。
でもコピーしてみる事で
「文字の行間の気配り」やら「デザインのバランス」などが見えてくる。
僕も学生の頃に気になるデザインは片っ端から100%コピーしました。笑

その棚は素材からのコピーですか?
デザインだけですか?

徳田 : 素材は同じ物はさすがに手に入れられないので、木工室に落ちている木材を使用しました。そのときはあこがれだったんですね。
まだ「イームズ」はまだ今みたいに認知もされていなかったので現物を見る事も触る事もできませんでした。東京には少しだけあったんですけど。でもその程度です。
だから雑誌の切り抜きを見ながら製作していきました。
実はその棚は今でも家で使用しています。

(その現物がこちら)

佐野 : お?!
それは凄いですね。
徳田さんの「ものづくり」の原点の作品ですね。

徳田 : でも、モロコピーしたつもりが全然似ていない。。。
家具の知識も当時は全くなかったので作りもなにもかも甘いんですね。。。

佐野 : わかります。
その似ていない部分が色々な「差」なんですよね。

徳田 : そうなんです。
コピーしてみて、その作品の凄さであったり、
商業ベースに乗れる凄さというのが改めて体験でき、勉強になる。

佐野 : 本当にその通りだと思います。
その行為を行う事で、作り手の気持ちを理解することのできる近道でもありますね。

徳田 : そしてこの作品のおかげで自分で家具を作るのはやめようと思ったんです。

佐野 : えっ!早すぎませんか?笑
一発目の作品ですよね。。。

徳田 : 製作という点ですよ。

佐野 : あっ!なるほど。そういうことですね。
そういえば現在の徳田さんの作品も製作という点はご自身ではされていないですもんね。

徳田 : だから今までで唯一、自分の手で製作した家具ですね。
で、その時に気付いたんですよ。
自分の手で作る物の「クオリティー」が下の方だということを。。。
それまでは結構自分のことを器用な方だと思っていたんです。
なので自分で全ての行程を行えばクオリティーの高い物は出来ると思っていたんです。

つまり自分のイメージを自分で具現化するのが一番だ!と思っていたんです。

でもそれも模型レベルの話でした。
まあ学生だったんで。世間知らずでした。笑

佐野 : なるほど。
でもその考えが1つ目の作品で気付けるというのは、
デザインをしている立場から見てもうらやましい体験ですね。

徳田 : ラッキーですよね。
ただ、その制作した家具が自分のなかで本当に「好きすぎ」て
うまくいかなかったのが悔しかったんですよ。

佐野 : なるほど。
これはいい話ですね。

クリエィティブな世界に入ろうとしている時に自分のなかで好きすぎるぐらいリスペクトしている作品を模倣してみる。それは、普通のコピーより意味がありそうですね。
下手するとその行為のおかげで別の仕事に就く事になるかも。。。ですよね。

徳田 : ですね。
私の中でイームズに対する思い入れは半端じゃないんです。
その当時は大学では北欧の家具が人気で例えばウェグナーとか。
造形美の方向にみんなのベクトルは向いていたんですね。
一応芸術大学なので。

授業でも大学の教授はイームズの家などは「建築」ではないと断言されていました。
ただのプレハブや。と。。。

ただ私は大量生産に対するイームズの作品、考えの「冷淡さ」のようなものに引かれたんです。

なので他のデザインの世界、例えば、グラフィックデザインや家具以外のプロダクトデザインはヨーロッパ系のは好きなのですが、家具の世界はアメリカの方が好きなんです。理にかなっているというか、ノスタルジックではないというか。。。

佐野 : 徳田さん、本当にイームズは別格なんですね。。。笑
イームズにはいつ出会ったんですか?

徳田 : 中学生終わり、高校生はじまりぐらいですかね。
イームズの本を手に入れたんですね。
その時は普通に「デザインブック」として、他にもウォーホルの本などもです。

そして、大学一年の時に初めてイームズの作品集を大学の図書館で見たんですよ。
そのときに感動したというか「コレやコレ!」という感じです。

佐野 : なるほど。
その時は今の職業にあるイメージは持っていたんですか?

徳田 : いやなかったです。
でも小さい頃から絵が得意で芸術大学には行きたいと思っていたんです。

佐野 : そっか!神童ですもんね。笑
(徳田さんが小さい頃、絵がうますぎて周りに言われていたらしいです。これは別の日に同級生の方に会い、絵がとてもうまかったというのは確認しました。笑)

徳田 : 昔からサラリーマンにはなることはないだろうな〜と思っていました。うちの両親もサラリーマンなのでもちろんサラリーマンという職業はリスペクトしています。でもデザイナーになるんだろうな〜なりたいな〜と小さい頃から考えていました。

佐野さんはどうだったんですか?デザイナーになる気だったんですか?

佐野 : う〜ん。
私は元々デザイナーになる気満々ではなかったですね。
ただ何かの状況なり、「ものづくり」なり「創る」仕事をしたいと
漠然と考えていましたね。笑

徳田 : それは家がそういう感じだったんですか?

佐野 : いや。
私の家もサラリーマンでしたよ。

ただ、お恥ずかしいお話、昔の思春期によくありがちな「家否定」根性はあったかもしれません。。。笑
違う業種の仕事をしたいと。

ただ今になって痛いほど分かるのは何の仕事してようが全くもって一緒ということですかね。デザイナーいうても全然かっこいい事ばかりじゃないし。むしろ周りの友達と仕事の話をしていても「過酷やね」と良く言われますしね。

仕事ってどの仕事であろうが根本は一緒やと思うんですよね。
結局その仕事は誰かのためにしているし。自分本位ではいけないし。

徳田 : そうですよね。
取引する場が「社会」である以上は「ルール」が存在していますしね。
そういうことからも

「デザイナーはより社会性、そしてコミュニケーション能力がないと駄目」ですもんね。

佐野 : うんうん。そうですよね。
徳田さんのキャリアを話す上で「IREMONYA DESIGN LABO」の話はさけて通れないですよね。

徳田 : そうですね。
今のわたしを構成するキャリアの殆どをしめているのは
「IREMONYA DESIGN LABO」ですからね。

佐野 : 「IREMONYA DESIGN LABO」といえばやはり代名詞の商品は「ファイバーボックス」ですよね。
あのファイバーボックスのかわいい顔のデザインをされたのは徳田さんなんですか?

徳田 : そうですね。

佐野 : では「IREMONYA DESIGN LABO」で1つ目にデザインしたのはファイバーボックスですか?

徳田 : はい。自分用に作ったテッシュボックスです。
周りの反応も良かったので店頭にて販売を始めてみたんです。

するとこれが結構売れたんですよ。
それが1つ目ですね。

この「テッシュボックス」のおかげで
この路線で行く気持ちは固まりましたね。

佐野 : なるほど。

徳田 : ここからはファイバーを売るためにお店自体もかっこ良くしていかないと駄目ではないかという気持ちもあったので、デザインアイテム、雑貨、家具などを制作していきます。

佐野 : ちなみにそれはどの商品になるんですか?

徳田 : アイテム「LS-3」という商品です。

佐野 : あー僕もこの商品覚えています。
一時期欲しい時期がありました。笑

徳田 : そして「CHABU-DAI」ですね!

佐野 : なるほど。
この時期の「IREMONYA DESIGN LABO」は本当に行く度に
商品構成がドンドン更新されていましたもんね!驚きでした。

徳田 : そうですね。
この時期が今までで一番いろいろな商品を製作した時期だと思います。

おかげで「IREMONYA DESIGN LABO」が変化していっていると私も色々なところで聞きました。。。いい話も、悪い話も。笑

佐野 : まあ変化のタイミングの時というのはそういうもんですよね。
その後も着実に新作商品を発表していきましたよね。
僕も何度も色々な媒体で見た事があります。

聞きたいんですけど、
退職される時は「IREMONYA DESIGN LABO」に在籍時はデザインの殆どは徳田さんが手がけられていたんですよね?
そして今回のお店「SONGBIRD DESIGN STORE.」にも何点か見た事のある商品もあるんですがどういう形になっているんですか?

徳田 : 元々、僕は独立の際に全ての商品を「IREMONYA DESIGN LABO」に置いていくつもりでした。

退職すると決意してから社長と「IREMONYA DESIGN LABO」今後の事、
そして、「SONGBIRD DESIGN STORE.」のことなどを話をする機会がたくさんあったんですね。

その時に社長から聞いたんですが、元々私が入社する前から
「ファイバーボックスの専門店」にしたかったらしいんです。

佐野 : え?!

徳田 : その事を知らない私は、入社してからファイバーボックスの新商品もですが、それ以外の商品もたくさん作って販売してきました。

今考えると、社長も私にまかしてくれるという事だったので
8年間好きにさせてくれていたんですよね。

佐野 : うんうん。なるほど。
大きい社長ですね。

徳田 : そうですね。
今考えると、とても有り難い状況でした。
とても感謝しています。

佐野 : ということは、今の形、
つまり、「SONGBIRD DESIGN STORE.」は様々な家具や雑貨。
そして「IREMONYA DESIGN LABO」は「ファイバーボックスの専門店」へ、
と二つの店舗の流れがいい感じになってきているんですね。

徳田 : そうなんですよ。

佐野 : 「IREMONYAのブランド力を上げるために、色々なデザインの商品を作る事によって、同時に本来の「ファイバーが主役の店」という部分を、ぼかしてしまっていた感じなんですかね。

徳田 : そうかも知れませんね。。。苦笑

佐野 : 「SONGBIRD DESIGN STORE.」の話ですが、
オープニングの時に聞いたお話によると独立の際には「カフェ」を
したいという気持ちが大きかったと聞きましたが。

徳田 : そうです。
まさに今は自分のしたかった形になっています。
店としては、結構自分のなかではバッチリな感じできたと思います。
カフェがしたいと昔からいっていましたが半ば冗談もあったんですよ。実は。。。笑

でも飲食の経験は私自身はないのですが一緒にしてくれている
倉田が頑張ってくれています。
まあ、でも始めたばかりなんでカフェとしてまだまだな感じです。笑

佐野 : その今までしたことのないカフェもそうですが、お店として独立してみてよかったな〜ということありましたか?

徳田 : やはり、以前と比べると飛躍的に人とお会いする機会が増えた事ですね。そして、自分自身が看板となった事で、一つ一つの出会いに対する意味を真しに考えるようになりました。前が、いい加減だった訳ではありませんが・・。

感じた事の無いプレッシャーを背負った分、それがそのままモチベーションへと
つながっていて、とても充実しています。

佐野 : 徳田さんは今後どういうお店にしていきたいと考えているんですか?

徳田 : う〜ん。
京都でいちばんオシャレな店にしたいです。笑

佐野 : あっ!
でも僕も結構本気で「Refsign」を京都で一番オシャレな事務所にしたいと奮闘中です。笑
結構その辺の考え方が徳田さんと僕は似ていますもんね。。。笑

徳田 : これ聞きたいんですけど、
京都で「SONGBIRD DESIGN STORE.」と似たような店って佐野さん知っている所でありますか?

佐野 : う〜ん。ないですよね。
というか思うんですけど、うちの事務所もそうなんですけど
なんかシュッとしているところって京都の人って
あまり好きではないですよね?わかります??

徳田 : あ〜わかります。

佐野 : でもそれでいくと「efish」はシュツとしてますよね。
やはり京都の中では色々な点で、別格ですよね。
冷静に考えると西堀 晋さんが「apple」で働いていることもよくわからんぐらいスゴイですよね。

後、最近すごいカフェだな〜と思うのはマーブルさんのカフェですかね。
なんか長井さんのセンスのかたまりのような気がします。笑

(ここからは「D&DEPARTMENT」、「TRUCK FURNITURE」、「graf」、「Bluemark」など徳田さんと私の好きなベクトルのお店、デザインスタジオについて色々お話しました。)

佐野 : でも僕もそうですけど、徳田さんも結構、京都という土地柄を意識していますよね。

徳田 : はい。
京都意識していますね。。。
小さい子みたいですがやるからには、やはり京都で一番になりたいです。
後、なんか思うんですが、京都で一番になったらある程度のところで上にいけると思うんですよ。

佐野 : あっ!それ分かります。
私も東京、大阪と働いていましたが、
現在、京都にいるのもそういう気持ちからだと思います。

京都っていいですよね〜
あ〜「Refsign」も「SONGBIRD DESIGN STORE.」もいい具合でいきたいですね。。。

徳田 : 突然ですね。笑
でもそうですよね。。。。

でもRefsignのブログ見てますと言ってくれる方や、サイトを見てお店に来てくれる
方はとても多いですよ。

佐野 : ほんとですか!
それは本当にうれしいです。

前にも何かの記事で書いたんですが一回サイトを見て、もう見ないというサイトではなく、何度も何度も足を運んでくれるサイトにしたかったんですよ。
こういう話が一番うれしいし、テンションもあがります。
「SONGBIRD DESIGN STORE.」もこれから色々な雑誌に掲載されると聞きましたよ。

徳田 : そうなんです。
たくさんの方が遊びにきてくれたらうれしいですね。
そこからまたお店もいい感じに変化していくと思います。

佐野 : これからもご近所同士、頑張らないと駄目ですね。。。。笑
今回はお話ありがとうございました。

徳田 : いえいえ。
こちらこそありがとうございました。

「SONGBIRD DESIGN STORE.」とは?

2009年の5月16日に京都の堀川竹屋町にオープンした、家具、雑貨販売、カフェと
盛りだくさんなビル。徳田さんは現在京都造形芸術大学で非常勤講師もされています。

[ホームページ] http://www.songbird-design.jp/