今回、e・感性価値研究所の研究員フジイがお邪魔した「!-style(エクスクラメーション・スタイル)」は、“デザインで福祉を変える”をテーマに2005年京都のショッピングモール新風館で!-storeをオープンし、現在は京都八幡市にてオリジナル商品のデザインなどを行う!-design、レストラン等の飲食店にプロユースの下調理品の卸を行う!-foods、オリジナル陶器ブランド“factory made”などの製造を行う!-factoryなどのセクションに分かれ、オリジナル商品、コラボレーション商品の製造を行っている障害者就労支援施設です。

お話を伺ったマネージャーの吉野智和(よしのともかず)さんとは新風館で出店していた!-storeでお会いしたのが初めで、それ以来になるので彼此5年ぶりにお会いする事になります。
その当時、!-storeは、雑貨を扱うセレクトショップのような雰囲気で、現在の!-styleのような陶器やフードのオリジナル商品を製造する工房を持つ、福祉施設として独立するなんて思ってもいませんでした。
今思えば!-storeには障がいを持つ人の絵をピンバッジにしたものが売っていたり、福祉という点では、今に繋がる物があったなと思う事もありますが、お伺いして!-styleを始めたキッカケ、今後などについて聞いて来ました。

福祉に関わりだしたキッカケは特別な事はなくて、高校時代はアマレスをしてて、推薦で東京の大学に行く話もあったけど、後4年間レスリングをする事が我慢できないと思って、高校卒業してから京都のフィットネスインストラクターの専門学校でエアロビクスダンスとかしてたんですよ(笑)
専門学校時代は遊びながら色々やってて就職する気が無かったんですけど、後三カ月で卒業という時に就職してみようと思って就職フェアを探したら、やっている所が福祉系しか無くてそのまま就職した感じですね。
だから福祉に関しても専門的な知識がある訳でもないし、もの作りやデザイン、アートにもそんなに興味無いし、土日を楽しみに月曜日から金曜日まで我慢するような生活ですよね。
でもそんな事をやってた中で、ふと「何やってんだ自分は!」となったんですよ。
福祉やってご飯食べてるのに、適当な物を作って、自分が見て売れる物じゃないのに頑張って作ったと言って、買っていく人がいて、「えらい事やっちゃったな」というのに24歳位の時にやっと4年掛かって気付いたんですよ。

そこから初めてもの作りという事に興味を持って、社内で商品のデザインやブランディングを考えて植木鉢などの雑貨を作ってたんです。そしてそれをイベントで販売してた時に通り掛かった、今うちの社長の田中(株式会社J・F・S代表)が商品を見て、めちゃめちゃ良いって「うちの店で売らせてくれ」って言ってくれたんですね。
それで取引が始まって、そんな中で田中がこんな施設がいっぱいあって、ちゃんともの作りの事とかお客さんの事を考えたりして転換していけば、そこで働いている障がい者の人の喜びにもなるし、注文をする企業にもメリットがあるし、エンドユーザーにも喜んでもらえる物を提供出来る。みんながハッピーになれる事やからこんな事をもっとしようというのが!-styleのスタートなんですよ。

!-styleの原点は「良い物を作る事でお客さんが購入してくれ、購入してくれる事が働き手(!-styleではクル―と呼んでいます)の糧となり喜びとなる」という、それはどんなもの作りの現場でも言える普通の事に聞こえるけれど、「僕ら福祉の業界はまだ普通を目指すべき所で、スペシャルな事なんてその後の話」だと話をしてくれた。

それはオリジナル商品を販売、宣伝する場合に“障がい”“福祉施設”といった特別な扱われ方、感じられ方をされる言葉を全面に出したくないという!-styleの姿勢にも感じる事が出来ました。

「障がいのある人が作っていると知ると、その先入観があって“頑張ってますね”ってなるんですよ。 
だから先に物に対して良いなと思ってもらった方が入口がポジティブな所から入るので良いと思っていて、スタートでは一切出さないし謳わなくて、物が流通した段階でその背景をどう伝えるかを考えたら良いと思っていたんです。 それで最近になってやっと背景をどうやって柔らかく出していけばいいかという事で、カタログの説明文に一言だけ載せたんですよ。」

「でも、それはもの作りの背景に興味を持ってもらいたいという気持ちで決して売りではないですね。アートならその作家さんが気になるし、プロダクトならデザイナーの考えや背景が気になるという事と同列の事ととしてどうすれば伝わるかなという思いなんですけど・・・でも、正直悩んでる所です。」

先入観を無くし、普通に感じてもらう事への努力は、福祉施設として初めてセントラルキッチン的な業態を行っている!-foods部門でもあるようで、「食品を出すという所で衛生面は大丈夫かというのは間違いなくあるパブリックイメージで、それを僕たちは受け入れないと駄目なんです。受け入れた上で一般のキッチンよりも徹底的に洗浄し綺麗にするという所ですね。いつ誰に見られても、ここは大丈夫だというのを見てもらえば分かるという、それこそデザイン(ルックス)の力だったりするんです。誰もいないのにオープンキッチンの感覚です。」
陶器の商品とは違った方法ではあるけれど、同様にデザインの世界を使う事で社会に働きかけようとしている。
確かに僕自身も施設に入ってすぐ写真撮影をしている時に、キッチンは休憩室と窓一枚で仕切られた空間だけれど、ガラス越しで働いているクル―達がきっちりと白いマスク、帽子、手袋をして作業している雰囲気に押されてか、窓を開けて撮影する気持ちにならなかった。(だから写り込みしてます。謝)まさに吉野さんの言うデザイン(ルックス)の力だと感じる出来事でした。

休憩室から見えるキッチン

訪れて、お話を聞いて、吉野さんの言う“普通”の裏側には、まだまだ社会でのポジションが曖昧な福祉施設でのもの作りを、障がいの有無の関係無いデザインという世界を武器に塗り変えていこうとする。
「デザインで福祉を変える」という意味を理解出来たけれど、実際に施設で時間を過ごして感じたのは、それだけではなく、モハメド・アリのポスターが貼ってあったり、種類がバラバラな椅子や何気なく置いている物であったり、日常的に交わされているスタッフとクル―の会話や「こんにちは~」と元気に入って来て、世間話を少しして「またよろしく~」と出ていく業者さんの自然な感じやオープンな雰囲気も大きなエッセンスとしてあるような気もしました。

話を聞けば、スタート段階の!-foodsに他の会社で余った食材を加工出来ないかと、仕事を持って来てくれたのが発注先の業者さんだったそうで、そうした!-styleという場を通して様々な人が出入りし、価値を見出してくれる事がクル―達と社会との接点を作り、施設の目的である自立支援するという意味で大切な事で、!-styleの強みであると感じました。

最後に吉野さんに今後の!-styleの展望と興味のある事について聞いてみました。

「今は施設に来れる一部の人の就労支援なので、ここに来れない人もいますし、色々な角度から仕事というものを考えていきたいですね。 そういった事を全部やって他の事業者と!-styleがタッグを組んで1つのモデルケースを作って、全国の障がい者施設に提案したいです。」
「そうして色んな施設と繋がって初めて社会に提示出来るんだと思うんですよ。いくら!-styleがやっても社会に提示する力で言ったら知れてるんですよ。 手を組んで業界として提示する事でやっと社会にも届くんじゃないかと考えていて、まずは周りの施設といかに共同するか啓蒙するかというのが先決だと思っていますね。」
「興味としては、今は色々な事をやってみようと思っているんですけど、例えばデザイナーと福祉の現場と市場を繋ぐシステムをGマークに出してみて、システムでGマークを取ろうという1つの目論見とかありますね。割と!-stylehは異端視されたり、アナーキスト扱いされるんですけど、僕らめっちゃ王道好きですから普通にGマークが欲しいですもん。
システムにGマーク取って玄関にGマークを貼るとか面白くないですか? 何でGマーク?みたいな(笑)
でもそれは裏側にある作り手の舞台をちゃんと用意するという事にも繋がるんですけどね。」

現在は以前に一度スタッフ用のノベルティグッズとしてソープディッシュ制作の依頼を受けたコスメショップLUSHと、お客さんのプレゼント用ソープディッシュを作る話が進んでいるそうで、
!-styleの立ち上げの時に描いていた「ちゃんともの作りやお客さんの事を考えていけば、働いている障がい者の人の喜びにもなるし、注文をする企業側にもメリットがあるし、エンドユーザーにも喜んでもらえる物を提供出来る」というビジョンを他企業とのコラボレーションを行いながら着実に社会化させている事や、異端児される事も受け止めながら笑って進んでいる体育会系の吉野さんという存在も含め、「京都八幡の地から福祉が変わるかも知れない」そんな期待を!-styleから感じる事が出来た気持ちの良い日でした。



!-factory
〒614-8182 京都府八幡市上津屋南村7

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